研究概要 |
本研究は,バスケットボール競技において,一回性的で多様な表層でのスポーツ現象を支えて,その生成や構成に根拠を与えている深層での仕組みを「スポーツ構造」(佐藤,1992)という分析装置を用いて捉えることで,「スポーツ構造がバスケットボールの競技力を規定する」という独自の命題設定から,そのスポーツ構造を構成する,身体,知性,感性という三つの契機の内,身体性と知性を基礎づけ且つ特徴づけることで最も重要と考えられる感性的契機の究明を目的としている.三年計画の最終年度に当たる本年度は,バスケットボールの競技力を規定する「スポーツ構造」を構成する上で最も重要な美的倫理的価値観における基準としてシステムを構成する「感性」という契機を,次の三つの観点から究明する作業を行った 一点目は,マイケル・ジョーダンという希有のスーパースターを採り上げ,「美徳の具現者」(Andrews,1996)と見做される彼の文化的テキストとしての意味内容の系統的な分析から,彼の象徴化されたペルソナについて,その美的・倫理的価値を考察した.二点目は,チームの戦い方である「ゲームスタイル」を分析対象とし、バスケットボール競技が全世界的規模で拡大し普及した,その伝播を可能とする普遍性について,他のスタイルとの相互性において形成され続ける一つのプロセスを関係論的視座から考察を行った.三点目は,選手やその集合体としてのチームに対し最も影響を与え得るコーチの美的・倫理的価値観について,選手及びチームとの双方向的な相互作用に着目し,選手やチームのパフォーマンスに顕在化するコーチの美的・倫理的価値基準について考察した.そして、最終的に,その成果を、審査中の博士論文の第三章に「競技力を構成する契機としての感性」として纏めた
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