本研究の目的は、「運動実践に不可欠な思考の論理」を提示することである。このために、運動実践と身体的思考との関係を探り、運動習得における身体的思考の役割を明確にする。本年度は、初年度(H.20)の成果として、運動実践においてどのような場合に言葉が重要になるのか、また限界を持つのかを検討した論文、「運動実践における言語使用とその限界」が「体育・スポーツ哲学研究」掲載された。 また、運動実践の独自性を明示し、その実践においてどのような思考が生じているか、その思考の独自性とは何か、についてさらに研究した。運動習得には言葉によるだけでなく、言葉を使わない思考(非言語的思考)が不可欠になる。それは下位【動作】を使用する思考(身体的思考)であう。なぜその思考が運動実践に必要となるのかについて研究するために、運動の習得過程を現象学的に分析し、運動実践そのものの独自性を探った。すなわち、文献研究を土台にして、運動実践と【動作】との関係、【動作】と下位【動作】、【動作】の構造化の関係について検討した。夏期休暇中には、ドイツ・ケルン国立スポーツ大学に滞在し、大学図書館を中心に情報収集し、さらに同大学のスポーツ哲学者(シュールマン博士)と面談・討議した。以上の研究によって、最終目的である「運動実践に不可欠な思考の論理」に必要となる資料収集および理論的枠組みを整理した。
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