本研究は岡山大学において平成19年度から開始された双方向スポーツ教育活動が、教育効果としてのコミュニケーション能力に及ぼす影響について検討した。双方向スポーツ教育活動とは、中学校部活動指導群(A群:弱名)、地域スポーツ教室指導群(B群:68名)、スポーツ教室開催・指導群(C群:34名)の3群であり、指導期間前後にコミュニケーションスキル等のアンケート調査およびインタビュー調査を行った。また統制群(スポーツ指導を経験していない群:160名)においても授業前後に同様な調査を行った。その結果、統制群の授業前後のコミュニケーションスキル得点は変化しなかった。双方向スポーツ教育活動であるスポーツ指導によって、全対象のコミュニケーションスキル合計得点は平均0.2ポイント(7件法)有意に増加した。二元配置分散分析による群別比較の結果から、A群・B群はスポーツ指導前後においてコミュニケーションスキル因子得点を増加させたが、C群では増加しない因子がみられ、A群、B群とは異なる傾向が認められた。C群ではスポーツ教室開催のきっかけが監督からの指示との回答が82%であり、主体的なスポーツ教育活動とはいえない可能性があった。一方、日本人は主観的なコミュニケーション能力を遇小評価することが報告されており、コミュニケーション能力の定義や評価方法の改善も必要と思われた。以上より、本学の双方向スポーツ教育活動はコミュニケーション能力の向上に貢献したといえた。双方向スポーツ教育活動の実践において、コミュニケーション能力を向上させるには学生の主体性を担保することが重要であり、今後は般化させる取組が必要と考えられた。
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