運動発達の特性を考えると、神経系の発育が著しい幼児期は運動を調整する能力である平衡性・敏捷性・巧緻性・協応性等の自己の身体をコントロールする能力が顕著に発達する時期である。したがって、幼児期にはまず自己の身体をコントロールする能力である調整力を高めることが大切である。そのためには幼児に積極的に様々な運動遊びを体験させ、幅広い動作に対応する能力を獲得させるよう心掛ける必要がある。我々は平成20年度、幼稚園児650名を対象に、年代別に成就可能なラダー課題を検証するとともに、基礎運動能力との関係について検証した。その結果、幼児期における調整力の発達状況を捉える上で、ラダー運動は有効な運動課題であることが明らかにされた。また、基礎運動能力と各課題間に高い関係が認められたことから、子どもの基礎運動能力に及ぼす影響が大きいことが示唆された。そこで今年度は、保育現場におけるラダー運動の実践的効果について検証するために、ラダー運動を一定期間、運動遊びに導入し、、その前後で運動能力((1)20mダッシュ、(2)立ち幅跳び、(3)テニスボール投げ、(4) 5mダッシュ、(5)反復横跳び、(6)ジグザグ走、および(7)バランステスト)および各種運動課題((1)スキップ、(2)ギャロップ、(3)ケンパ、(4)なわとび、(5)グーチョキパー、(6)3回連続両足跳び)の成就率を比較検討した。被験者は207名(男児:109名、女児:98名)の幼児であった。彼らは、4ヶ月間、週2回の頻度で5種類の運動要素の異なるラダー課題を行った。その結果、20m走、ジグザグ走、および反復横跳びに特にラダー運動の効果が認められた。ラダー非導入園と比較した結果、特に年中児で20m走タイムの短縮が観察された。また、各種運動課題の成就率も高まる傾向が認められた。よって、運動能力を高める運動遊びの一つとしてラダー運動は有効と考えられた。
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