これまで、幼児を対象に、年代別に成就可能なラダー課題(縄梯子状の運動用具を使ったステップ遊び)を検証するとともに、走・跳・投種目で構成される運動能力とラダー運動の成就度との関係について検証してきた。その結果、幼児期の調整力の発達状況を捉える上で、ラダー運動は有効な運動課題であり、各課題と運動能力間に有意な関係が認められ、特に走能力に対するラダー運動の貢献度が高いことがわかった。そこで本年度は、保育現場におけるラダー運動の実践的効果について検証するために、ラダー運動を一定期間、保育園の運動遊びに導入し、各種運動能力および運動課題成就率に及ぼす影響を検証するとともに、特に走能力に対するラダー運動の効果について対照群(ラダー運動非導入園)を設定し検討した。被験者は実験群の206名(男児:108名、女児:98名)であった。彼らは、4ヶ月間、週2回の頻度で5種類のラダー課題((1)かけ足、(2)横向きダッシュ、(3)グーパージャンプ、(4)ジグザグジャンプおよび(5)シャッフル)を行った。ラダー課題導入前後で、基礎運動能力テスト(20mダッシュ、立ち幅跳び、テニスボール投げ、5mダッシュ、反復横跳び、ジグザグ走、およびバランステスト)を行った。さらに、運動課題((1)スキップ、(2)ギャロップ、(3)ケンパ、(4)なわとび、(5)グーチョキパー、(6)3回連続両足跳び)の成就率を、担当保育士が調査した。 結果として、20m走、ジグザグ走、反復横跳び、および各種運動課題の成就率にラダー運動の効果が認められた。そして、20m走における伸び率の有意差が、対照群と比較して認められた。また、今年度新たに導入したサッカー遊び中における、子ども達の身のこなしも、ラダー運動の向上とともに大きく変わってきた。よって、現代の幼児における運動能力改善に向けてラダー運動は有効であることがわかった。
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