研究概要 |
平成22年度は,(1)小学校・中学校で実際に展開されている体育カリキュラムを分析し、体育カリキュラム開発に有効な方法を解明すること、(2)体育教師のカリキュラムデザイン能力の形成に必要な情報を抽出することであった。 (1)については、2009年度から2010年度にかけてに中学校の体育カリキュラム開発モデル(石原一則と小山吉明の体育カリキュラム開発)を分析し、教師による体育カリキュラム開発方法に有効な視点を抽出した。それは、(1)目標像を描く背景に明確な教授学的コンセプトがあること、(2)子どもの生活課題・発達課題の把握からカリキュラム開発の戦略を練っていること、(3)3年間の目標→各学年のテーマ→年間計画→単元計画へと具現化する手続きをとること、(4)大単元授業でのカリキュラムづくり、(5)体育理論と体育実技を両輪としたカリキュラム開発である。小学校の体育カリキュラム分析は課題として残った。 (2)については、体育教師としての専門性という視点で考察した。カリキュラムを構想し開発する力が今日教師の専門力量としてきわめて重要になっている。なぜならば、実践を基盤にした教師による体育カリキュラム開発は、体育は何を教える教科なのかという教科のディシプリンや目的・価値の確認、子どもの生活課題・発達課題の把握、教材づくりや指導過程、学習集団の組織化、授業マネージメントの点検、制度や学校体育条件の分析等を総合して展開する教師固有の重要な教授行為だからである。教師が体育カリキュラム開発を行う際に、その専門性を発揮する重要な点として、(1)年間計画づくりにおいて子どもたちが最初に出会う最初の授業単元、(2)重点教材や重点内容の措定、(3)教師が専門家として育ち合う「同僚性(collegiality)」を校内に築くことが明らかにされた。さらに、協働的専門性としてのカリキュラム開発という視点の重要性も明らかにされた。
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