本研究では、北海道の開拓期に本州から移住と共に持ち込まれた伝承芸能を調査し、その地域と産業と人々にもたらした舞踊の役割、変遷を背景に、今日、少子化による継承者不足や市町村合併や産業の移り変わりなどによって、伝承が危ぶまれている地域や、すでに伝承が途絶えてしまった地域も含め、これら伝承芸能を後世に残すべく、調査し保存することを試みてきた。 2.研究の進捗状況 (1)初年度の2008年度は、本研究の典型事例と位置付けた千歳市無形民俗文化財「泉郷獅子舞」を核に、無形文化財、あるいは、無形民俗文化財に指定をされている獅子舞に焦点を絞って、現地調査を実施した。 (2)2009年度は、北海道各地に伝承されている無形民俗文化財の獅子舞を中心に、現地での映像による撮影や伝承経緯の聞き書き、文献の収集による採符と調査、舞踊譜制作のための舞踊記譜法の研究を行った。 (3)最終年度の2010年度は、2年間の研究を踏まえ、ひとつのまとめとして伝承芸能・獅子舞を舞踊譜で保存するための考察とアーカイブズ化の方法論を検討、典型事例として千歳市の「泉郷獅子舞」の詳細な分析、それによる舞踊譜の作成を行った。 3.研究の成果 (1)舞踊譜の作成は典型事例として取上げた千歳市の泉郷獅子舞について完了している。この舞踊譜作成の方法論の提示、及び、調査対象としてあげた無形文化財、無形民俗文化財の現状調査をしたものを報告書(およそ9万字)としてまとめた。 (2)現地調査の対象として北海道内には54件の無形文化財、無形民俗文化財としての獅子舞が存在する。そのうち、実際に現地における調査を実施できたものが、13件、アンケート調査による現状把握ができたものが40件余である。
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