研究概要 |
平成20年度は、武道の戦後改革に関する体育史上の根本問題にアプローチするために設定した実証レベルの3つの課題うちの、(1)大日本武徳会役員1,969名の公職追放に関する審査の実態の把握に重点を置いて取り組んだ。 そのために、まず第1に、国立公文書館等に所蔵されている武徳会関係資料の収集を行った。第2に、それらの資料のうち、中央公職適否審査委員会『武徳会関係者審査記録(自昭和二十二年九月五日至十一月十四日)』、『武徳会関係者審査記録(二)(自昭和二三、一、二三至三、二)』等の審査関係書類から、公職追放の審査対象となった武徳会役員1,969名に関するデータを抽出し、それらを本部・支部・支所別、府県別、役職別に整理した。これらのデータによって、GHQの占領政策によって公職追放の処分対象となった武徳会役員の実態を審査の内実にまで踏み込んで検討すること、また、武徳会役員の公職追放の全体状況および処分の妥当性や歴史的意義を考察することがはじめて可能となる。ただし、上記の作業に膨大な時間を要したため、GHQ資料との照合作業はなし得なかった。第3に、ごく限られた人数ではあるが、そのなかから詳細な反証が提出されているケースをピックアップし、その内容や武徳会内での役職、経歴等を検討した。それらのうち、末広厳太郎の反証などは、戦時期における武徳会の組織編成をめぐる内部抗争の状況等を知ることができる有効な資料であることが判明した。第4に、藤沼庄平など日記や回想録等を残している武徳会役員について、それらの資料の収集を行った。これらの資料も公職追放だけでなく、戦時期における武徳会の内実等を知る上で有効であることが判明した。
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