本年度は、主として2つの研究を実施した。研究1では、研修会での談話分析である。体育教師が自主的に集い授業計画や教材づくり等について対面的な相互作用が営む対話場(研修会)が各地域で設けられている。体育教師はこの対話場に参加し、様々な経験知や実践知を互いに交流することで相互に学習し、自らの1資質能力を向上させているものと考えられる。本年度はこの教師同士による発話データを分析することで、教員間相互学習の様相を明らかにした。 教員間相互学習の分析に用いた教員の発話データは、長野県学校体育研究会合宿研究会(2009.7.30~31)の分科会において収集した。まず、5つの分科会を選定し(1分科会5~10名)、教員間のディスカッションをVTR撮影及び参与観察によって発話記録を作成した。現在、カテゴリー分析によって、教員間で交流される知の特徴を検討中である。 研究2では、体育教師を対象としたインタビュー調査を実施し、体育教師としての力量を飛躍的に高めた経験、また、体育に対する信念の形成に影響を与えた経験を収集する。選出された5名の教員に個別に約2時間程度の半構造化面接法によるインタビュー調査を実施し、体育授業の実践に関わる資質・能力を成長させるきっかけとなった体験を、時間の流れに沿って3つ以上自由に語ってもらった。インタビュー内容は、インタビュイーの承認を得て、録音した。体育教師としての成長経験を分析検討した結果、理論知(大学教員等が提供する論理的・抽象的知識)と実践的知識(授業実践の中で得た経験的知識)との相互作用による衝撃的な気づきや問い直しが、転機となっていることなどが明らかにされた。
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