研究概要 |
<剣道騒音と聴力疲労の関係について> 1. 目的:剣道騒音が剣道難聴の一因であろうことは、これまでの研究成果から十分推測されるが、聴力変動を評価する測定機器の性能やヒトの日常生活における生理学的変動なども影響して明確に証明することができなかった。そこで、本研究は、一般的なオージオメータ・OAEによる聴力検査に加えて、聴性脳幹反応(ABR)の検査を行い、蝸牛神経を含む脳幹聴覚路に由来する電位反応から、神経および脳幹の機能についての生理的変動や剣道稽古の影響を明らかにした。 2. 方法:聴力検査として、リオン社製のオージオメータ・OAEおよび誘発反応検査装置(Audera)による聴性脳幹反応(ABR)装置を使用した。刺激音圧は、75dB, 55dB、35dBの3種類とした。 1) 被験者は、年齢19歳から23歳で聴力の正常な本学剣道部有段者(初段〜4段)学生(男子4名、女子3名、計7名)を対象とし、日常生活における聴力機能の生理的変動について検討した。 2) 通常の稽古(1時間30分)の前後に検査を行い稽古の影響を検討した。 3. 結果: 1) 聴力検査;被験者によっても異なるが各周波数帯域で5〜20dBの個人内変動を有している。また、剣道稽古の聴力への影響は、被験者によって異なり、聴覚機能が向上、低下および変化しない場合と、結果は様々であり、因果関係について明確に証明することはできなかった。 2) 聴性脳幹反応(ABR)検査:両耳への各刺激音圧に対する波間潜時は、8回にわたる検査結果から、数値にバラつきが認められ、個人内変動を有していた。剣道稽古後の応答は、I〜V波間潜時に遅延が生じる者が、数人認められた。35dB音圧においては、III〜V波間潜時の遅延する傾向も見られたが、特にI〜III波間潜時に遅延する傾向の者が多く、下部脳幹部の聴覚伝道路およびその近傍への影響が示唆された。
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