バックプレート付きスタート台がスタート動作に及ぼす影響は次のようにまとめらた;(1)セットポジションでは、従来のスタート台より重心位置が48mm程度前方に位置した、(2)セットポジションでのバックプレートに置かれる膝関節角度は90度程度であった、(3)離台直前にバックプレート条件ではより水平に近い加速が観察された、(4)離台時にバックプレート条件ではより水平に近い投射角が観察された。したがって、バックプレート付きスタート台でのスタートは、体重をやや前にかけた構えから、短い時間で身体を前方に加速して大きな水平速度を得ることが重要であると言える。 スタート台上において短い時間で大きな水平方向速度を得るための構えと動作を検討するために、スタート台上の床反力を左右別々に測定した。台上では、左右の力発揮の途切れが長くないことが必要であると観察された。 離台後の減速抑制のための姿勢を検討するために、身体のまわりの気泡量を評価した。気泡量と空中水平速度に正の相関が認められ、着水時の指尖点と大転子点を結ぶ直線と水面の成す角が気泡量と負の相関関係にあった。したがって、大きな水平速度で着水角度が小さい場合、身体は気泡の中を通過することが明らかとなった。気泡量と水平速度低下には明らかな関係は認められなかったが、大転子の方向変換の強さを示す軌跡の時定数は0.3秒程度であり、この時定数と水平速度低下量に正の相関が認められた。したがって、大きな水平速度で浅い着水角の入水を果たし、腰や脚が沈み過ぎないような姿勢制御によって、気泡中を進み、速度低下を抑制できるものと考えられる。
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