研究概要 |
本研究は,野球においてバットの物理的な諸特性がスイングにどのように影響を及ぼすかという,従来からの研究課題に対して,研究代表者が提案するバットスイングに関する新しい技術評価の方法を適用して検討するものであった。 本年度は,前年度に開発された実験用バットを用いて,実際にボールを打撃する,選手による打撃実験を行った。被験者は,9年以上の野球経験のある大学野球選手5名とし,バットは,付加する錘の質量を5種類,錘の取り付け位置を5種類に変化させて計25種類の組み合わせのバット設定として,1本の実験用バットを用いた。被験者には,実験用バットを持って,バッターボックス内で試合と同じ位置で構えさせ,験者がトスする実験用ボールを打つように指示した。バット設定1種類につき10回の打撃をさせ,スイング中のバットに加わる加速度をグリップエンド内部に装着した加速度計により測定し,選手のバットスイングを評価した。 その結果,被験者のスイングは再現性が高く動作が定型化しており,スイング動作は選手それぞれで固有のものとなっていた。そのために,質量や重心位置の異なるバットをスイングさせても,それらバットの特性の変化に対する反応は,選手それぞれで異なった。すなわち,バットの質量や重心位置はスイングに影響するが,それらがどのように影響するか,どの程度影響するかは選手によって異なるものと考えられた。個々の選手により適合するバットを選択するには,その選手のスイングの特徴を把握する必要があることが示唆された。今後の課題として,選手の技術や体力レベルの違いがどの程度スイングに影響するかを検討し,その上でバット選択との関連性を考える必要がある。
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