リズム同調性のある活動は社会的統合の現れであり、ソーシャル・スキルの一つともいえる。人と人との非言語的な相互交渉のもとに生まれるリズム同調の成立に影響する個人の心理的要因並びに生理的応答の特性にっいて分析した。動作課題として直径30cmの回転盤を回転させる前腕回転課題を用いて、対面する二者が回転速度を調整しあう過程を分析した。今年度は、個人に固有の快適動作速度として知られるPreferred Pace(PP)の遅速が、調整過程に及ぼす影響を検討した。大学生女子16名を対象として、事前に測定したPPをもとに2群(Fast-PP群とSlow-PP群)に分けて群間でペアを作り、単独条件→同調条件(対面)→単独条件の順に課題を行なった。各条件遂行中の回転速度、呼吸、心拍、気分を測定した。同調時の回転速度は、Fast-PP群本来の速度よりも遅く、Slow-PP群は速くなった。Slow-PP群の変動係数はFast-PP群よりも高くなった。また、同調条件終了後の単独条件におけるSlow-PP群の動作速度は同調条件遂行前よりも速くなり、速い動作速度遂行の影響が残存した。心拍変動については、Slow-PP群のLF/HF比がFast-PP群に比べて高い傾向にあり、HF/total比はFast-PP群で高い傾向にあった。個人が志向する速度の違いが同調時の自律神経系活動に差異を生じさせる可能性が示唆された。
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