空間を共有しながら同じリズムで動くとき、我々は共通の感情を表出し、他者との一体感を味わうことがある。リズム同調性のある活動は社会的統合の現れであり、ソーシャル・スキルの一つともいえる。人と人との非言語的な相互交渉のもとに生まれるリズム同調の成立過程における他者介入の影響を実験的に検討した。指先タッピング課題を用いて、実験協力者に一定のタッピング周期を保持することを教示し、サクラが異なる周期で介入した場合のテンポ保持への影響を分析した。同期条件(本人が行なうタップにサクラが同期する)、補間条件(本人の行なうタップとタップの中間にサクラが同期する)、Fast条件(周期400msで介入する)、Slow条件(周期3000msで介入する)の4条件である。大学生女子20名を対象として実験を行なった。Slow条件では他者介入の影響は少なくテンポは保持された。Fast条件はタッピング周期が延長しテンポ保持が阻害された。同期条件では、他者介入により変動係数が増加しテンポ保持に揺らぎが生じたが、遂行に対する快感情や介入した他者への好意的印象がもたらされた。一方、補間条件ではテンポ保持は持続したが、否定的感情が生じ、他者への印象評価が低下した。二者間のリズム同調場面において、他者の動作速度および同期のタイミングの違いが遂行者のテンポ保持や気分、他者印象に影響することが示唆された。
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