空間を共有しながら、同じリズムで動くとき、我々は共通の感情を表出し、他者との一体感を味わう。リズム同調性のある活動は社会的統合の現れであり、ソーシャル・スキルの一つともいえる。人と人との非言語的な相互交渉のもとに生まれるリズム同調の成立過程を、具体的な他者との交流活動場面において分析した。 (1)3歳児のつみき遊び場面:幼稚園における3歳児女児の積み木遊びの変容を入園直後から記録観察した。ビデオカメラに記録した事例を行動コーディングシステムにより分析した。「積む」(積み木を積む)の交互性に、「修正」(積み木の操作性に優れる子どもが積んだ積み木の位置を修正する)と、「シーッ」(互いに顔を見合わせて声をかける)が挿入されて二者のリズムが形成されていた。 (2)大学生の手合わせ遊び場面:向かい合って着席した二者が「机をたたく→正面で手と手を合わす」を繰り返す課題を用いて、側方からビデオ撮影し上肢の動作を分析した。3分間の実施時間中に、双方の肘関節の屈曲・伸展の波形が変化し、相手の出方に応じた上下空間と前後空間の調整が行なわれた。内省報告から、この空間調整は相手の意図を推測する手がかりとして作用し、二者の関係において主導的役割にも受動的役割を意味づけていた。 これらの分析から、二者間のリズム生成過程において、他者行為に対する自己身体の調整が随意行なわれ、相補的な関わりの中でリズムが保持されていることが示唆された。
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