研究概要 |
最終年度は、国際誌にみられた方法論の推移・傾向について最終的なまとめを行い、そうした国際的視野から、日本における体育・スポーツ史研究の方法論の位相を捉えた(各項目の詳細は、成果報告書に記載の通り)。特に、平成21年9月に英国ドゥ・モンフォート大学国際スポーツ史・文化研究所(ICSHC)より招聘を受け、平成22年5月から11月末日までの7ヶ月間、ICSHCにて本研究を実施できることとなったため、方法論の傾向分析を、ICSHCにて開催のセミナーを通して得た知見からも補完した。とりわけ、「多元的視角の進行そのもの」がグランド・セオリーの探求および構築(グローバリゼーションといった関係力学に対する説明)に寄与するという結論を導いてる。同時に、上記の研究所では、必要な雑誌論文の翻訳を行い、日本で重視されている研究視角との相違を明らかにするために、9月8日に日英比較スポーツ史研究セミナーJapanese Reflections on the History of Sport (One-day Symposium Wednesday 8 September 2010)を提案し、開催された(Organised by the International Centre for Sport History and Culture, De Montfort University, Leicester)。本セミナーには英国内のみならず、近隣諸国からも研究者が参加し、日本スポーツ史を単なるアジアの地域史研究と捉えるのではなく、よりグローバルな関係性の中で捉えるべき必然性を確認する結果となった。より具体的には、たとえば、日本と英国との外交史そのものが、日本史であり、かつ英国史であるという認識である。これまでは、日本スポーツ史という一国史の範疇における脈絡に終始しており、他方、英国史のみの脈絡(ほとんどなされていないが)で捉えられていたことが問題であった。また、ドイツと日本におけるファシズム関係史構築の可能性についても提案がなされ、そのことは筆者が、昨年公表した"'Ryosai-kembo','Liberal Education' and Maternal Feminism under Fascism : Women and Sports in Modern Japan.", The International Journal of the History of Sport (March 2010),pp.537-552.において、女性スポーツ史の問題は、イタリア・ドイツ・日本における枢軸国の傾向分析としてまとめる必要性があるという結論とも一致する。 9月11日にはロンドンで開催の英国スポーツ史学会においても個別研究発表を行い、帰国後の1月にはびわこ成蹊スポーツ大学セミナーハウスにて、3月には、京都大学文学部にて、英国における研究動向および英国で公表した論文についての研究経過報告も行った。
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