研究概要 |
本年度は,スポーツマーケティング・マネジメント学の体系化の第一歩として,マネジリアル・マーケティング研究(研究課題A:市場細分化・ターゲットマーケティング理論)に着手した。具体的には,民間スポーツ・フィットネスクラブ市場においてはどのような不平・不満及び苦情を持ったクラブ会員(スポーツ消費者)が存在し,どのような不満行動・苦情行動を起こしているのかについて吟味した。そのため,F県内にある民間スポーツ・フィットネスクラブ3店舗(全国チェーン)のクラブ会員を対象に,2008年12月23目〜2009年1月9日にかけて直接手渡し法による質問紙調査を実施した。配票総数は931,有効回収標本数及び回収率はそれぞれ871,93.6%であった。 その結果,以下のようなことが明確にされた: (1)過去1年間に,クラブ会員の42.1%は何らかの不満を認知しており,そのうちの43.3%は「不満顕在化行動」を,また56.7%は「不満潜在化行動」を選択し起こすということが明確にされた。 (2)不満・苦情に対するクラブ側の対応(消費者苦情対応)についてクラブ会員に4段階評価をしてもらった結果,改善度の平均値は1.62,改善内容に対する満足度の平均値は1.58と,両者とも低く,クラブ側の不満・苦情対応に対して会員は満足していないということが明確にされた。 (3)クラブ会員を「不満顕在化」群,「不満潜在化」群,「不満なし」群といった3つのグループにセグメントし,各群のクラブ・ロイヤルティ(10項目からなる構成概念)の程度を比較した結果,「不満なし」群の値が最も高く,次いで「不満潜在化」群,「不満顕在化」群という順になっていた(0.1%水準の有意差)。このような結果は「不満潜在化群よりも不満顕在化群の方がクラブ・ロイヤルティは高くなる」(中西,1994)という示唆とは全く逆の結果であり,上記(2)の結果が大きく影響しているものと思料される。つまり,クラブ側の不適切な対応は,不満を顕在化させたクラブ会員のクラブ・ロイヤルティを低下させてしまうのである。
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