本研究は、目標到達課題を用いて、運動出力の左右差の要因を明らかにすることを目的とした。21年度は目標到達課題における反応時間や正確性(距離誤差)の左右差を解析することによって、左右差が身体構造上の制限によって生じるかどうかを検討した。腕の動作空間(左/右半空間)が異なることによる腕の動作制限を除くために、体幹部を左/右に向け、頭部のみ90度回旋した姿勢で昨年度と同様の課題を実施した。被験者11名中、欠損値が生じた2名と八田・中塚の利き手テストにより、左利きと判定された1名を除いた右利き大学生8名のデータを解析した。 被験者はタッチセンサー付き刺激提示ディスプレイに対して左右どちらかの体側を向けて椅子に座った。頭部のみ90度回旋した姿勢で、ディスプレイ上に提示された標的(直径5mmと10mmの赤円)に対して、体側中央のホームポジション(HP)から頭部回旋の向きと同側の人差し指で素早くタッチした。 反応時間、標的中央からのタッチ位置の距離誤差について、左右手(2)X左右標的提示視野(2)の2要因分散分析を行った。動作時間において手と視野の有意な主効果は得られなかったが、交互作用が有意傾向(p<0.1)であったため多重比較を行った。左手-左視野、右手-右視野の反応時間が、それぞれ左手-右視野、右手-左視野の反応時間より短く、左手の左右視野差は有意であった(p<0.05)。また、右視野提示の標的に対する反応時間は右手の反応時間が有意に短かったが(p<0.05)、左視野提示の標的に対する反応時間の反応手間差は得られなかった。これらの結果は、前年度の身体的制限を伴う実験結果とほぼ同様の結果であった。これらの結果は、身体構造上の制限が反応時間の左右差を修飾しないことを示している。距離誤差においては、反応手や標的提示視野による左右差は得られなかった。
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