昨年度までのフレームワークに基づく研究を継続すると同時に、新しい角度からテーマにアプローチした。つまり、昨年度までは、日米の比較的な枠組において、アンケートとインタビューに基づく質的調査によって、現在を生きるインフォーマントのライフヒストリーをたどりつつ、一人ひとりが積み重ねてきた経験のデータから、神話に対するポジションの固有性が生まれる原因を明らかにしようとしてきた。これに対し、本年度は、明治以降の近現代の日本史をさかのぼり、身体能力において「黒人」を頂点とする「人種」的序列(あるいは「人種」的ヒエラルヒー)の意識や思考が構築される時期・時代とその環境に分析の眼を向けた。近現代という歴史的文脈に立ち入ることによって、「神話」の形成過程を段階的あるいはより立体的に炙り出そうとする意図がここにある。 2010年6月1日から15日まで、米国歴史学会(0AH)と日本アメリカ学会(JAAS)提携による米国人研究者短期滞在プログラムによるホスト校としてペンシルヴァニア州立大学教授マーク・ダイレソン氏を招聘した。研究テーマに関する意見交換を行い、共同では発表する機会を得た。2010年8-9月にはアメリカでのリサーチ(ペンシルヴァニア州立大学)をおこなった。2011年2月には、自分の運動適性をはかるための遺伝子テストを実施した。 なお本年度の中間報告的な意味を兼ねて2011年3月に米国テキサス州ヒューストンで開催されたOAH年次大会のセッションで発表する予定であったが、東日本大震災による影響のため出席を見合わせざるを得なかった。
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