初動負荷トレーニング(BMLT)における動作特性を解明するための実験とその効果をしらべるために介入研究を行った。前者では、ラットプルダウン動作時の筋活動とキネマティクスをしらべて検討した。その結果、BMLTにおける動作は、神経筋制御の面からみると、1)筋活動に先立って弛緩相があり、筋活動時間が短い。2)体幹の近位から遠位への筋活動が現れる。3)共縮が起こらない。バイオメカニクスの面からは、1)体幹の中心部によって生み出された力、エネルギーがタイミングよく順次加算されて末端部に伝わり、末端部の速度を増大する運動連鎖の法則に則ることが明らかになった。この成果は、第17回国際電気生理運動学会(カナダ・ナイアガラ)で報告した。一方、後者の中高年者の運動機能に及ぼすBMLTの効果に関する研究では、BMLTと従来の筋力トレーニングおよびストレッチングのそれらを比べ検討した。対象は中高年者(n=67)とし、2ヶ月間のトレーニングを行い、筋力、柔軟性、バランス、敏捷性および巧緻性等をしらべた。 その結果、初動負荷トレーニングは他のトレーニングに比べて日常生活の質をより高める動きづくりのトレーニング法としてより妥当であることが強く示唆された。特に、高齢者が一定の力を出し続けたときの張力動揺をしらべた結果、BMLT群では張力動揺テストにおける力の変動係数が有意に低減することが明らかになった。このことは、主動筋を支配する運動単位の発射活動の動態がより滑らかになったことを意味し、BMLTがより細やかな運動制御機能の向上に役立ち、BMLTが神経系の協応能を高め、動きを滑らかにするトレーニングとして有効であることを示唆している。
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