平成20年度の活動としては、まず6月にナゴヤドーム球場にて、調査員約百人を動員して、有効回答数が千を超えるアンケート調査を行った。この種の調査は平成18年から3年連続して行っており、プロ野球ファンの意識を知る上で、有意義な定点観測となっている。この調査の分析結果は、年末に中日球団事務所で報告し、今後の活動の参考にしてもらっており、さらには代表者の所属学部HPでも一部を公開し、市民に成果を還元している。 また、同じく6月末には仙台へ赴き、かの地の球場を視察するとともに、ファンにインタビューを行い、プロ野球文化の新興地と伝統ある地域(名古屋)の比較調査の起点とした。 9月には編著『トヨティズムを生きる』を刊行したが、これは名古屋とその周辺地域で盛んな自動車産業が地域住民の生活・文化にどれほど深く影響を与えているか、根底から分析したものである。これにより、この地のプロ野球球団とそのファンがどういう物質的基盤に依拠するかがより明確になった。さらに10月には同じく編著『市民学の挑戦』を刊行したが、こちらではグローバル化の深化と、その派生物としての新自由主義の普及により、ますます解体していく都市生活を再生するために、市民の、市民による、市民のための新しい公共空間をいかに立ち上げるかを理論的に模索した。 あと、年明け以降の3月には、日本スポーツ社会学会で行われたミニシンポに登壇し、近代社会においてスポーツが果たしてきた役割を再考した上で、今後それをどう生かしていくべきかを展望し、本研究課題の基礎固めを行った。
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