研究概要 |
本研究では静止状態でのwheelie動作による車椅子使用者のバランス保持能力と上肢筋力との関係を検討した。 車椅子バスケットボール競技者4名(下腿切断1名、胸椎損傷3名、30.3±10.5歳,178.3±2.89cm,69.0±11.14kg)を対象とし、静止状態でのwheelie動作を矢状面および前額面にて撮影した。被検者は、頭頂、左右耳朶、左右肩峰、両肘(外側上顆)、両手首(橈骨と尺骨の中間)、および、車椅子上で大転子に相当する部分(右側)にマーカーを装着した。課題は開眼で30秒間wheelieを行うことで、適度な休息をはさみ3試行行わせた。肘角度および体幹角度は矢状面での映像より求めた。肘角度は、右肩峰点と右肘を結ぶ線、および右肘と右手首を結ぶ線のなす角度とした。体幹角度は、頭頂と右大転子点を結ぶ線と鉛直軸のなす角度とし、バランス保持能力は体幹の動揺度(体幹角度の最大値と最小値の差)の大小で決定した。肩の静的屈曲力および肘の静的伸展力はデジタル筋力計で計測し、上腕二頭筋、上腕三頭筋、腹直筋、橈側手根屈筋、尺側手根伸筋より筋電図を導出した。 肩の静的屈曲力は右が41.6±9.80kg,左が41.3±8.15kg,肘の静的伸展力は右が18.9±6.37kg,左が25.7±11.55kg、また体幹の動揺度は7.63±3.63度であった。有意な負の相関が体幹の動揺度と右肩の静的屈曲力(r=-0.727,P<0.01)、および左肩の静的屈曲力(r=-0.822,P<0.01)の間に認められたが、肘の静的伸展力との間に相関は認められなかった(r=-0.140およびr=-0.545、ともにP>0.05)。 以上より、静止状態でのwheelie動作による車椅子使用者のバランス保持能力と肩の静的屈曲力との間に強い関係があることが明らかとなった。 尚、筋電図データに関しては現在解析中である。
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