研究概要 |
本年度は上肢を非対称的に使用しない一般人の場合の肩関節における棘上筋の筋断面積、外転筋力、棘上筋における固有筋力指標について横断的な調査を行い、両側の筋厚、筋力がいかに発達するかという観点から研究を行なった。 10歳から21歳までの男性を10-12歳群、13-15歳群、16-18歳群、19-21歳群の4群に分け、棘上筋の筋断面積を超音波診断装置(SSD-900,Aloka)、肩関節の外転筋力を90度外転位においてハンドヘルドダイナモメーター(ミュータスF1,アニマ)を用いて測定した。取得されたデータは19-21歳群を成人値と考え、筋断面積、筋力、固有筋力指標がいずれの年齢で成人値に達するかという観点で分析を行なった。棘上筋の筋断面積は16-19歳群において成人値と有意な差が見られなくなり、成人値と同等の値に達したものと考えられた。同様に、肩関節外転筋力、固有筋力指標が成人値に達するのは、それぞれ16-19歳群、13-15歳群であった。 本研究は投球動作を長年続けたときに、野球投手の肩関節回旋腱板筋の形態や筋力に見られる影響を検討する研究計画の中で、投球動作を行なわない者(コントロール群)の場合を把握する目的で行なわれたものである。結果は利き腕側と非利き腕側において筋断面積、筋力、固有筋力に差が見られないことを示すとともに、各指標が成人値に達する時期において固有筋力指標が最も早期に成人値に達し、その後で筋断面積や筋力が成人値に達することが示された。固有筋力の増加が神経系の機能の改善によりもたらされるとする先行研究から考えると、棘上筋機能の発達においても発育期の早期には神経系の機能の改善による筋力向上が見られ、その後、筋断面積の増加による筋力増加が起こるという順序性があることが示唆された。
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