本研究は、社会主義の模範といわれ、スポーツ分野においても世界の注目を集めたドイツ民主共和国(以下、東ドイツと表記)のスポーツ史を再構成するための基礎的研究として、ドイツ統合(1990年)後に語られた旧東ドイツ関係者の言説について自叙伝的著作を中心に検討するものである。 今年度では、ドイツ統合後から現在までに、自叙伝的著作などで、旧東ドイツのスポーツ関係者が東ドイツスポーツ及びその周辺について何を多く論じているのか、それをどのように論じているのかを明らかにし、先行研究や同時期の研究との比較のうえで、その特徴を検討ことを目標とした。そして、その研究成果を学会などで公にすることを課題とした。 研究の結果、この時期の著作では、1998年以前の著作と比べて、東ドイツスポーツのネガティブな側面への言及が少ないことなどが明らかになった。再統一後のドイツにおける東ドイツ、東ドイツ市民、東ドイツスポーツなどに対する不当な扱いなどが反映しているように考えられた。 それらの結果をスポーツ史学会第24回大会(2010年11月)、平成22年度筑波大学体育史研究会(2011年2月)において発表した。 東ドイツや東ドイツスポーツに否定的な立場の東ドイツスポーツ関係者にインタビューすることが今後の課題である。
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