研究概要 |
低酸素刺激は低酸素誘導因子(HIF)-1αの発現を促進することで,生体に各種の適応性変化を引き起こすことが知られている.通常酸素下において,HIF-1αはprolyl hydroxylase(PH)の作用によって発現が抑制されている.近年,PH抑制剤であるethyl-3,4 dihydrobenzoate(EDHB)の投与がマウスの持久的運動能力を向上させることが報告されている.本研究は,PH抑制作用のあるethyl-3,4 dihydro-benzoate(EDHB)の投与が骨格筋の運動依存性毛細血管新生に及ぼす影響を検討した.実験には,11週齢のWistar系雌ラットを用いた.運動として回転ゲージによる自発走行運動を10日間負荷した.EDHBは100mg/KgBW/dayで,運動開始後3~5日目と8~10日目に投与した.ずり応力増大による二次的な血管新生刺激を排除するため,赤血球数の有意な増加を起こさないよう,間欠的なEDHB投与を行った.投与後の体重,ヘマトクリット値,ヘモグロビン濃度及びヒラメ筋重量には変化が見られなかった.ヒラメ筋のcapillary-to-fiber ratioは運動群と投与群で有意に増加し,投与+運動群では運動群よりも有意な増加が観察された.免疫組織染色の結果,投与群と投与+運動群で血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の顕著な発現増加が観察された.これらのことから,PH抑制は,VEGFの発現を促進して毛細血管新生を引き起こすとともに,運動依存性毛細血管新生を促進することが示唆された.
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