研究概要 |
年をとると、骨格筋の細胞が萎縮、脱落するために、筋力が著しく衰えてくる。超高齢化社会を迎える我が国においては、この老化にともなう筋萎縮をできるだけ軽減し、高齢者が健康的により長く生活できるようにすることが急務である。しかしながらこの加齢にともなう筋萎縮(サルコペニア:加齢性筋肉減弱症)の分子メカニズムについては、これを誘導するいくつかの候補(Atrogin-1,MuRF1,Akt etc)が挙げられているものの、まだまだはっきりしない部分が多い。私は筋肥大に重要な役割を持つことが以前から知られており、発育期の筋成長にも重要であることが最近証明され、その役割が再認識されてきたserum response factor(SRF)に今回注目した。加齢期のマウス骨格筋におけるSerum response factor(SRF)関連物質の量的な変化を調べるために、RT-PCR法、細胞分画法、および蛍光免疫組織化学法を用いた。その結果、加齢筋において、SRFおよびその上流で働くMRTF-Aの蛋白量が有意に減少していた。加齢筋線維では、細胞質におけるSRF蛋白の免疫活性が低下していた。またMRTF-Aとその発現量調節に関わるSTARSのmRNA量も加齢筋では著しく減少していた。したがって、加齢性筋肉減弱症(サルコペニア)の原因としてSRF経路不全が考えられる。これらのデータだけでは実用化は難しいが、骨格筋におけるSRF蛋白の量は筋肥大の程度と密接に関係している。これを判断材料とすれば、サルコペニアを軽減する効果的な運動の形式や栄養物質の開発に大きく貢献できると思う。
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