研究概要 |
1.Berberine (BBR)による骨格筋AMPキナーゼ(AMPK)の活性化:単離ラット骨格筋を用いた実験系において、古来糖尿病の治療に用いられてきた薬草オウレンの主成分であるBBRが、濃度・時間依存的(≧0.3mM, ≧15分)にAMPK αサブユニットリン酸化を亢進すること、骨格筋に2種類存在するαサブユニット(α1、α2)をともに活性化すること、またBBRによるAMPK活性化がインスリン非依存的糖輸送亢進を伴うことを明らかにした。これらの結果は、BBRが運動に類似して骨格筋AMPKを急性的に活性化する作用を持つことを示すとともに、BBRの抗糖尿病効果発現に骨格筋AMPKが関与している可能性を示唆するものである。2.Caffeine (CAF)によるAMPK α1の優先的活性化:昨年度の研究では、単離ラット骨格筋において、CAF (3mM, ≧15分)がα1、α2をともに活性化することを明らかにしたが、本年度の研究では、CAFが低濃度(1mM, 15分)においてα1のみを活性化し、濃度を上げるとα1とともにα2を活性化すること、α1のみが活性化される状態においてもインスリン非依存的糖輸送が亢進することを示した。これらの結果は、疫学研究から示されるCAF含有飲料の抗糖尿病作用の発現に、CAFの骨格筋AMPK α1活性化作用が寄与している可能性を示すものである。3.オウレン水溶性抽出物による骨格筋AMPKの活性化:1の研究においてBBRのAMPK活性化作用が明らかになったため、オウレンの水溶性抽出物との作用を比較検討したところ、BBRの最大効果よりも抽出物の最大効果が有意に強いことが明らかになった。BBR以外の主要成分であるpalmatineのAMPK活性化作用がきわめて弱かったことから、AMPK活性化作用を有するBBR以外の成分、あるいはBBRの作用を増強する成分をオウレンが含有する可能性が示唆された。
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