研究課題
筋収縮は骨格筋におけるInterleukin-6(IL-6)の産生・分泌を高め、1時間程度の身体運動後にはその血中濃度が安静時の数十倍に上昇し、脂質代謝および糖質代謝に大きな影響を及ぼしていることが明らかになってきた。しかし、IL-6が筋再生や筋肥大に重要なタンパク質代謝に果たす役割については十分に検討されていない。そこで本研究では、筋収縮により産生・分泌が高まるIL-6が骨格筋量の維持増進に及ぼす影響を検討することを目的とした。今年度は、マウス筋芽由来の培養細胞であるC2Cl2細胞に機械的ストレッチを負荷し、遺伝子発現およびタンパク質のリン酸化に及ぼす影響について分析した。C2Cl2細胞をフィブロネクチンで処理したシリコン製のチャンバーで培養し、一軸方向に15%の伸展刺激を30分間加えた(毎秒1回)。伸展刺激6時間後にはIL-6の遺伝子発現が増加したが、肝細胞増殖因子(HGF)の遺伝子発現には変化がなかった。タンパク質合成促進の指標となるp70S6 kinase (p70S6K)のリン酸化は30分間の刺激直後に増加した。またmitogen-activated protein kinase (MAPK)ファミリーのp38MAPK, extracellular signal-regulated protein kinasel/2(ERKl/2), c-Jun NH_2-tarminal kinase (JNK)は伸展刺激によりリン酸化が上昇した。これらの結果より、培養細胞に伸展刺激を加えるとIL-6の遺伝子発現が上昇するとともに、タンパク質合成が促進され、そのメカニズムにはMAPKによる細胞内情報伝達が関与している可能性が示唆された。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Am. J. Physiol. Cell Physiol. 295
ページ: C458-C467
Biochim. Biophys. Acta. 1780
ページ: 1101-1105