研究課題
昨年度は、運動による筋収縮のモデルとしてマウス筋芽由来の培養細胞であるC2C12細胞に機械的ストレッチを負荷したところ、IL-6の遺伝子発現が上昇するとともに、タンパク質合成が促進された。そこで本年度は、ストレッチによるタンパク質合成促進作用がいかなる細胞内情報伝達因子を介しているかを検討した。C2C12細胞をシリコンチャンバーで培養し、細胞伸展装置を用いて静的伸展(5%もしくは15%の伸展、30分間持続)および周期的伸展(5%もしくは15%の伸展、1伸縮/秒、30分間)を加えた。一部の実験では、伸展前に阻害剤を培地に加えた。刺激後に細胞を回収し、Westem blot法で解析した。30分間の伸展刺激は、タンパク質合成促進作用の指標となるp70 S6 kinase (p70S6K)およびeukaryotic elongation factor 2 (eEF2)を活性化した。その活性化は静的伸展よりも周期的伸展で高く、伸展度では5%よりも15%でより活性化された。mTOR kinaseの阻害剤であるrapamycinは伸展刺激によるp70S6Kの活性化を抑制したが、eEF2の活性化には影響を及ぼさなかった。また、phospho lipase Dの阻害薬である1-butanolは伸展刺激によるp70S6Kの活性化を一部抑制したが、eEF2の活性化には影響を及ぼさなかった。一方、Tyrosine kinaseの阻害剤であるGenisteinは伸展刺激によるp70S6KとeEF2の活性化を完全に抑制した。以上の結果より、伸展刺激によるタンパク質合成促進作用の活性化は静的伸展よりも周期的伸展で大きく、受容体型もしくは非受容体型のTyrosine kinaseを介して惹起されることが示唆された。
すべて 2009
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Cells Tissues Organs 191
ページ: 248-259
Muscle Cell Physiology(Osaka University Press)
ページ: 3-14