運動疲労時の中枢神経系における制御機構の解明を目的として研究を実施した。本年度は、運動疲労負荷課題の基礎的検討及び運動疲労負荷課題遂行時の磁場応答の基礎的検討を行った。 1.運動疲労負荷課題の基礎的検討:運動疲労負荷課題の確立には疲労そのもの、疲労の認知、および疲労感を分離可能な課題の確立が必須である。ミラーボックスを用いると、疲労側上肢を非疲労側上肢と、あるいは疲労側上肢を非疲労側上肢と認識させることが可能であった。これらの原理を使って、ハンドグリップを用いた60回の運動疲労負荷後、疲労側上肢の握力の低下は減弱、非疲労側上肢は低下傾向を認めた。このことは、運動疲労において、運動野より上流の抑制システムの存在を示唆しており、従来の定説であった脊髄レベルでの制御を覆す、新しい知見が得られた。これらの行動学的な結果をベースに、脳磁図を用いて、運動疲労時の中枢神経系における制御機構を解明すべく歩みを進めることが可能となった。 2.運動疲労負荷課題遂行時の磁場応答の基礎的検討:運動負荷課題遂行時の基礎的検討として、脳磁図を用いた試験を予備的に実施した。運動疲労負荷課題遂行前後のハンドグリップと脳磁図の間のコーヒレンス解析を行ったところ、疲労により、その値が上昇することが明らかとなった。これは、過去の知見とも一致しており、試験・解析の信頼性・妥当性を確認できたとともに、左右反転を用いた来年度からの実験の下準備が全て整ったこととなる。
|