脳磁図等を用い、運動疲労時の中枢神経系における制御機構を解明することを目的に、健常な成人を対象として本研究を実施した。 実験は、疲労負荷試験、反転疲労負荷試験、休息試験の3つから構成され、モニターを用いて左右反転するものとしないもの、及び、疲労を負荷しない、3回の実験を、3クロスオーバーデザインで実施した。被験者には、予告音を手掛かりに、音声キューに合わせ、音声キューの間利き手でボールを握ることをイメージするよう指示した。疲労負荷は、被験者は脳磁図用ベッド上に座ってもらって実施した。実験中、脳磁図、心電図、握りセンサーによる計測を行った。なお、本研究は、大阪市立大学医学部倫理委員会の承認を既に得ており、本研究の遂行に当たってはプライバシーに充分配慮し、実施時、医師が付き添った。 利き手を握る際の反対側及び同側の脳半球の運動野にあらわれた脱同期の強さをそれぞれについて解析を行った。疲労負荷の前後での脱同期の強さには差が認められなかった。しかしながら、疲労や休息前後での脱同期の強度の差を休息試験と疲労負荷試験、休息試験と反転疲労負荷試験で比較したところ、反対側の脳半球の運動野において、統計学的に有意な差は認めなかったものの、疲労負荷試験では反転疲労負荷試験よりも減弱の程度が著しかった(-0.45±0.64vs-0.03±0.34nAm(mean±SD))。 疲労負荷前後のボールを握るイメージをした時の脱同期の強度を、定量化同期脱同期解析を用いて検討したところ、左右反転の有無で、大脳のイメージした手と反対側の運動野において、顕著な違いを認め、疲労時における視覚フィードバックの運動野に対する影響についての重要な知見が得られた。今後、コヒーレンスを始めとした解析を進めるとともに、再現性を含め、最終年度において更なる検討を進めて行く。
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