スポーツ競技において、動体視力が勝負の決め手となる場面は多い。しかし、動体視力の神経生理学的研究は乏しく、特に高速運動物体に対する動体視力の機能やその特性についてはほとんどわかっていないのが現状である。そこで本研究代表者は、動体視力と眼球-頭部協調運動の関係についての行動生理学および心理物理学的研究を進めている。その中で、追跡眼球運動の最高速度の速い被験者ほど動体視力は良好で、その能力は年齢と共に低下する傾向が認められた。この結果は追跡眼球運動が動体視力の重要な決定要素であることを示している。そこで本研究では、高速物体に対する追跡眼球運動の神経経路を感覚系、予測系、運動系に分けて考え、それぞれの年齢的変化を解析することによって動体視力の神経生理学的メカニズムについて考察する。 平成20年度は実験システムの構築をおこなった。実験システムの内容は、頭部固定装置、バイトバー、LineaSled装置、直線加速度センサー、眼球運動測定装置、刺激作成およびデータ収集装置(LabVIEW)、データ解析ソフト(MATLAB)から成る。被験者はLineaSled上の頭部固定装置に頭部を固定し、左右方向に能動的に直線運動させる。LabVIEWとMATLABを組み合わせることによって、視覚刺激の作成→視覚刺激の提示→眼球運動の測定→データの収集→データの解析を同じシステム内で実施する。予備的実験を繰り返し、運動物体の形、サイズ、運動方向、運動速度、提示のタイミングを決定した。
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