研究概要 |
本年度の目的は伸張性収縮において筋肥大を誘発する条件と筋損傷を誘発する条件との間でタンパク質合成系/分解系シグナルタンパク質群の活性化およびその作用機所を比較・解明することである. 我々は本研究においてラット腓腹筋に対して伸張性収縮運動を5回4セット行う際に収縮速度が遅い(60deg/sec)条件下では伸張性収縮後一週間にわたって足関節発揮トルクに有意な変化はなく、Akt、mTORなどのタンパク質合成系のシグナル分子が活性化するものの、収縮速度の速い(180deg/sec)条件においてはほぼ一週間にわたって有意な発揮トルクの低下が見られるとともにFOXOおよびミオスタチンなどのタンパク質分解あるいは筋萎縮関連タンパク質の発現誘導、活性化が観察されることを見出した(Ochi et al.J of Appl Physiol, 2010)。さらに同モデルを用いて収縮速度の速い群ではAMP kinase(AMPK)発現の亢進を確認するとともに、培養筋細胞C2Cl2においてAMPK活性化剤であるAICAR処理によりFOXO1およびFOXO3a発現が亢進し、同時にミオスタチン発現が亢進することも確認された。FOXO1aのメチル化に関しても収縮速度の速い群やAICAR処理したC2Cl2では低下しており、FOXO1活性の亢進も確認された(未発表).ポリフェノールはSirt1に作用することでメチル化活性を制御することが報告されている.我々はりんごポリフェノール摂取が伸張性収縮後のトルク低下を軽減することを見出した(Nakazato et al, Mol Food Nutr Res 2010).これらの結果から総合的に伸張性収縮後のトルク低下はAMPKを起点とするシグナル伝達との関連性が高いと考えている.また、AMPK活性の制御あるいはAMPK活性と下流のシグナル伝達と伸張性収縮との関連性が今後の重要な研究課題に挙げられる.
|