コエンザイムQ10は生体内でエネルギー産生賦活作用と抗酸化作用を併せ持つ生体内物質である。生体に取り込まれた酸化型コエンザイムQ10は、NAD(P)H依存性のコエンザイムQ10還元酵素などの酵素作用により還元型コエンザイムQ10に変換され、血中や組織に広く分布する。また、その還元比(還元型/酸化型+還元型×100%)は生体の酸化ストレスの一指標になるとされている。しかしながら、生体が酸化ストレスを受けた際の還元型コエンザイムQ10の生体内挙動についてはいまだその詳細は明らかではない。本研究では、ラット強制水泳時の還元型コエンザイムQ10を中心としたコエンザイムQ10レドックスサイクルの詳細とコエンザイムQ10の疲労軽減効果について検討した。 平成22年度の研究では、ラットへの有酸素運動の負荷の程度と生体内のコエンザイムQ10還元比の連動性を検討した。有酸素運動はラット尾部に3%の錘を装着し、強制水泳を負荷させた。また、これまでの強制水泳条件を変更し、ラットの一定時間の強制水泳後、一時休息させ、その後さらに再度強制水泳を負荷させ、その水泳継続時間を測定した。その結果、血中乳酸量やLDH遊離量を疲労の指標とした時、あらかじめコエンザイムQ10を経口投与したラットでは、コントロールに比べて水泳継続時間の延長と還元型コエンザイムQ10量の減少が連動して生じることを確認した。さらに、強制水泳の負荷の程度はNAD(P)H-コエンザイムQ10還元酵素活性とも良く連動した。一方、総(酸化型と還元型の総和)コエンザイムQ10量には変化が認められなかった。これらの結果は、過度な有酸素運動によって生体に酸素ラジカルが生成され、それを消去するためにNAD(P)H-コエンザイムQ10還元酵素活性が上昇したものと推察された。 これらの結果は、コエンザイムQ10は運動性疲労を軽減できる可能性を示唆し、その作用機構には生体内のNAD(P)H-依存性コエンザイムQ還元酵素を中心としたコエンザイムQ10レドックスサイクルが重要な役割を担っていることを認めた。
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