寒冷環境下での皮膚血管収縮反応は、アドレナリン性交感神経を介して反射性に生じるとともに、皮膚の直接的冷却作用によっても起こる。直接的な皮膚冷却による皮膚血管収縮には、アドレナリン性要因と非アドレナリン性要因(主にNO産生の抑制)が関与し、この反応は血管平滑筋細胞のミトコンドリアでの活性酸素の産生増加によって増強される。したがって抗酸化物質であるビタミンCを投与することによって局所冷却時の皮膚血管収縮反応は抑制されるのではないかと考え、この仮説について検討した。健康な大学生ボランティア16名を被検者とし、皮膚内マイクロダイアリス法によって前腕皮膚2カ所に生理食塩水あるいはビタミンC(L-アスコルビン酸、10mM)を投与した。投与部付近の局所温度を34℃から24℃に低下させ、その間の皮膚血流量を連続測定した。皮膚血管コンダクタンス(CVC)は皮膚血流量を平均血圧で除して求めた。局所冷却時のCVCの減少はビタミンCの投与によって有意に(P<0.05)抑制された。このビタミンC投与によるCVC減少の抑制は、NO合成酵素抑制剤(L-NAME)の追加投与中にも認められたが、アドレナリン受容体遮断薬(ヨヒンビン+プロプラノロール)の追加投与によって完全に消失された。これらの結果より、直接的な皮膚冷却時の皮膚血管収縮反応はビタミンCの投与によって抑制され、これはアドレナリン受容体機能の変化によることが示唆された。
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