研究概要 |
寒冷環境下での皮膚血管収縮反応は、アドレナリン性交感神経を介して反射性に生じるとともに、皮膚の直接的冷却作用によっても起こる。直接的な皮膚冷却による皮膚血管収縮には、アドレナリン性要因と非アドレナリン性要因が関与し、この反応は血管平滑筋細胞のミトコンドリアでの活性酸素の産生増加によって増強される。したがって抗酸化物質であるビタミンCを投与することによって全身および局所冷却時の皮膚血管収縮反応は抑制されるのではないかと考え、この仮説について検討した。健康な大学生ボランティア8名を被検者とし、皮膚内マイクロダイアリス法によって前腕皮膚2カ所に生理食塩水あるいはビタミンC(L-アスコルビン酸、10mM)を投与した。投与部付近の局所温度を24℃に低下させた状態で、冷水循環スーツによる全身冷却を10分間行ない、その間の皮膚血流量を連続測定した。皮膚血管コンダクタンス(CVC)は皮膚血流量を平均血圧で除して求めた。全身および局所冷却に対するCVC応答は冷却前値からの相対変化(%)で評価した。全身冷却に対するCVC応答はビタミンC投与により変化しなかった(ビタミンC投与部;-46±13%,非投与部;-47±14%,P=0.85)。全身冷却中のCVCレベルはビタミンC投与部の方が非投与部よりも高かったが、これは局所冷却時のCVCの減少がビタミンCの投与によって有意に抑制されたことに起因された。これらの結果から、局所皮膚冷却状態での全身冷却に伴うアドレナリン性交感神経活動の増加に対する皮膚血管収縮反応は、高濃度の抗酸化ビタミンの投与によって変化しないことが示唆された。
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