研究課題
我々は医学部学生の国家試験受験をひとつのストレッサーと考え、平成20年度医師、看護師、臨床検査技師等国家試験受験者51名と平成21年度国家試験受験者19名、計70名を対象にPOMS心理テスト(短縮版)および質問票による生活環境調査、唾液中のアミラーゼ活性とクロモグラニンA(CgA)濃度、血球計算、末梢血リンパ球サブセットおよびCD4陽性T細胞サブセット検査(Th1/Th2比、制御性T細胞)測定を行い、ストレス度と免疫能の関係を検討してきた。平成22年度は20年度国家試験受験前に協力を得られた学生に連絡を取り、卒業後1年を経過した段階で、上記と同様の検査を行い、国家試験受験前との比較検討を行った。POMS心理テストでは有意の変化を認めなかったものの、卒業後の唾液CgA濃度が有意に高値を示した。唾液CgA濃度は交感神経系のストレスマーカーで、精神的ストレスを反映するとされている。末梢血中の免疫細胞では制御性T細胞を含むCD4+CD25+T細胞比率が卒業後有意に高値を示し、それにより液性免疫に関与するTh2細胞が有意に低値を示すなど、精神的ストレスが加わったときにみられる変化と同様な変動を示した。これらの成果は研究協力者の牛木和美らにより第57回日本臨床検査医学学術集会や第17回日本未病システム学会学術総会において口演ないしポスター発表を行った。また、牛木和美の平成22年度保健学学位論文(修士)としてもまとめられた。現在、テーマを絞って原著論文として投稿準備中である。なお、20年度から21年度に研究した唾液中のアミラーゼ活性とCgA濃度に関する研究が臨床病理の原著論文として2011年2月に掲載された。本研究を通して、ストレスが獲得免疫に関係する細胞にも影響を及ぼしていることが認められ、CD4陽性T細胞サブセットの測定がストレス評価に役立つ可能性が示唆された。
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臨床病理
巻: 59巻 ページ: 138-143