研究概要 |
本研究の目的は,若年者の身体活動量と血管内皮機能,脈波伝搬速度による動脈スティフネスとの関係を検討することである.本年度は,血管内皮機能の評価方法である上腕の血流依存性血管拡張反応検査(FMD)システムを構築し,測定結果の再現性について,日内変動,一過性の運動,および月経周期の影響の点から検討しようとした.日内変動については,健康な成人男性6名を対象に,9時,13時,および17時にFMD検査を実施した,その結果,FMDはそれぞれ5.8±2.1%,10.5±2.4%,および10.4±2.3%であり,9時と13時,および9時と17時との間にそれぞれ有意な差が認められた.一過性の運動の影響については,健康な成人男性6名を対象に安静時,100wattの運動強度で30分間の自転車こぎ運動終了直後,終了30分後,および60分後にFMD検査を実施した.その結果,FMDはそれぞれ85±4.9%,5.0±3.2%,6.9±3.0%,および8.7±3.8%であり,安静時と運動直後,運動直後と終了60分後との間にそれぞれ有意な差が認められた.月経周期の影響については,健康な成人女性6名を対象に卵胞期および月経期にFMD検査を実施した.その結果,FMDはそれぞれ10.1±3.1%,7.1±3.5%であり,卵胞期と月経期との間に有意な差が認められた. 以上のことから,FMD検査を実施する上で,検査時間を統一すること,検査前の運動の回避,および女性を対象者とする場合は月経周期を考慮する必要性があることが示された.これらの結果を踏まえて,次年度より若年者(高校生)を対象に身体活動量と動脈スティフネスとの関係について測定を実施する予定である.
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