研究概要 |
本研究の目的は,若年者の身体活動量と血管内皮機能,脈波伝搬速度による動脈スティフネスとの関係を検討することである.本年度は,10歳代から20歳代の男性を対象に日常の身体活動量が血管内皮機能および動脈スティフネスに及ぼす影響にっいて検討しようとした.被験者は78名の男性(平均年齢18.2歳)であり,身体活動量計を彼らに7-10日間装着させ,3METs以上の身体活動量が1週間に23エクササイズ以上の者を活動群(45名),23エクササイズ未満の者を非活動群(33名)に分類した.血管内皮機能を評価する血流依存性血管拡張反応(FMD)検査と動脈スティフネスの指標である脈波伝搬速度(PWV),収縮期/拡張期血圧(SBP/DBP)の計測は,日内変動を考慮し,午後3時から午後5時の間に測定した.その結果,活動群および非活動群のFMDは8.6±1.3%,6.4±2.5%,PWVは10.9±1.4m・sec^<-1>,11.0±1.4m・sec^<-1>,SBPは120.3±8.7mmHg,118.8±9.4mmHg,DBPは65.1±7.4mmHg,64.8±6.5mmHgであり,FMDについてのみ両群間に有意な差が認められた(p<0.05).また,活動群および非活動群の身体活動量は37.3±4.5kcal・kg^<-1>・day^<-1>,33.0±3.8kcal・kg^<-1>・day^<-1>であり,両群間に有意な差が認められた(p<0.05).身体活動量とFMD,PWV,SBPおよびDBPとの相関関係をみたところ,身体活動量とFMDとの間のみに有意な正の相関関係が認められた(r=0.46,p<0.05).以上のことから,10歳代から20歳代の男性を対象とした場合, 身体活動量が血管内皮機能に影響を及ぼすことが示唆された.これらの結果を踏まえて,次年度は,若年者(高校生)の対象者を増やして,身体活動量と血管内皮機能とのとの関係について測定を実施する予定である.
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