研究概要 |
本研究の目的は,若年者の身体活動量と血管内皮機能,脈波伝搬速度による動脈スティフネスとの関係を検討することである.本年度は,男性高校生を対象に日常の身体活動量と血管内皮機能との関係について検討した.被験者は88名の男子高校生(平均年齢16.4歳)であり,運動系クラブに所属していている運動群(51名)と非運動系クラブに所属もしくはクラブに所属していない非運動群(37名)とに任意に分けた.血管内皮機能を評価する血流依存性血管拡張反応(FMD)検査および脈波検査装置を用いての脈波伝播速度(PWV),収縮期/拡張期血圧(SBP/DBP)の測定は,日内変動を考慮して午後4時から午後6時の間に実施した.また,被験者に身体活動量計を5~7日間装着させ,エネルギー消費量を計測した.その結果,運動群および非運動群のFMDは8.8士1.9%,6.1±1.7%,PWVは10.5±0.9m-sec^<-1>,11.2±0.7m・sec^<-1>,SBPは125.4±11.4mmHg,123.8±12.1mmHg,DBPは66.1±89mmHg,67.4±7.4mmHgであり,FMDおよびPWVについて両群間に有意な差が認められた(p<0.05).また,運動群および非運動群の一日の身体活動量は39.3±10.5kcal・kg-1・day-1,30.0±7.9kcal・kg-1・day-1であり,両群間に有意な差が認められた(p<0.05).次にFMDを従属変数に,身体組成,血圧,身体活動量などの測定項目を独立変数とした重回帰分析を実施したところ,FMDには身体活動量が有意な正の影響(p<0.01)を,SBP,年齢が有意な負の影響(p<0.01)をそれぞれ与えていた.以上のことから,一日の身体活動量が多い男子高校生は,血管拡張反応が大きいこと,また,中高齢者の測定結果と同様に,男子高校生における身体活動量の増加は優れた血管内皮機能の維持に大きく貢献することが示された.
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