本研究では、精神健康度や個人の心理的特性が、どのような生活習慣行動特性に関与しているか、また、それがメタボリックシンドローム(MS)の出現と関連しているか否かを明らかにすることを主たる目的とする。本年度は、3年間の研究期間の最終年度であることから、年度前半は本課題にかかる情報収集と昨年度の研究成果の論文化、年度後半は3年間で取得したデータ整理・解析を実施した。現在もデータ解析中ではあるが、現時点までに明らかになっている事項を以下に報告する。 先行研究では、心理的特性・体力・形態・生活習慣・生化学的指標という多面的な情報を未治療・未介入の糖尿病患者と健常者とで比較した研究は皆無であるため、まずは当該課題について解析を行った。年齢をマッチさせた両群間で有意差が認められた項目は、形態・体力・MS危険因子の有無、消灯時刻のずれ、睡眠時間のずれ、覚醒時の気分、休養による気分転換効果の有無、食事時間の十分さなど、生活リズム、休養・睡眠、運動行動の生活習慣項目で、全てにおいてMS保有者の方が好ましくない状況にあった。しかしながら、精神健康度レベルには両群間で有意差は認められなかった。 近年、睡眠障害がメタボリックシンドローム、糖尿病、心筋梗塞、脳卒中など多くの生活習慣病の発生を予測することが報告されている。加えてごく最近、生活リズムと糖尿病との関連が遺伝子レベルで確認されていることから、現在得られている結果は、それらを支持するものと考えられる。引き続き、糖尿病患者群におけるメンタルヘルスレベルと生活習慣・体力・病態に関する分析を行い、研究成果報告書にまとめる予定である。
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