ストレスとリラクセーションによる唾液アミラーゼ反応の差異について検討するために、70名の大学生を無作為に2つにグループ分けして、クロスオーバーデザインにより、内田・クレペリン検査による計算ストレス負荷と自律訓練法によるリラクセーションの誘導を行った。どちらも10分間別々の部屋で同時に実施し、前、5分後、10分後に、アミラーゼモニターを用いて唾液アミラーゼ活性を測定した。その結果、介入の前後でのProfile of Mood States(POMS)の変化からは、リラクセーション効果があるものと思われ、アミラーゼ活性もリラクセーションで低下する傾向がみられたものの、計算ストレス負荷では有意な変化はなかった。また、介入の前後の各種情動とアミラーゼ活性との間に有意な順位相関関係はみられなかった。 事務系企業社員に関する研究では、健常新入社員39名を対象として、入社目、その3日、8日後の3回、アミラーゼ活性を測定するとともに、POMSによる情動の変化について検討した。その結果、アミラーゼ活性は入社後に有意に低下し、初回と比べて3回目で有意な低下を認めた。また、初回においてアミラーゼ活性とPOMSの疲労との間に有意な正の相関がみられた。 その他、17名の社員を対象として、月曜日から金曜日まで連続した5日間の午前10時における変動、月曜日、水曜日、金曜日の3日間での午前10時、午後0時、午後3時、午後5時の日内変動、1年間に及ぶ隔週(月2回)における月曜日の午前10時の変動について検討したが、いずれもアミラーゼ活性の有意な変化はみられなかった。 以上の結果から、リラクセーションや入社後の慣れによるストレス低減が、唾液アミラーゼ活性の低下に結びつく可能性が示唆されたが、ストレス負荷との関係は定かではなく、明らかなアミラーゼ活性の勤務時間内の日内変動や勤務の曜日での変動、年間の変動は見いだせなかった。
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