研究概要 |
第2年度に実施した住民調査(文京区、府中市、静岡県小山町の住民基本台帳差より無作為に抽出した65-74歳の男女2700人)のデータを分析した。有効回答者は2045人(回答率75.7%、男性50.5%、年齢69.6±2.9歳)だった。独立変数を環境要因、従属変数を目的別歩行(TW : transport walkingとRW:recreational walking)として分析した。 歩行と強い関連の認められた環境要因は「景観」「社会的環境」で、TWとRWのいずれのタイプの歩行とも関連していた。オッズ比(95%CI)はそれぞれ、TW:1.31(1.07, 1.61)、1.31(1.06, 1.61)、RW:1.55(1.26, 1.89)、1.42(1.16, 1.75)であった。TWはRWと比較して関連する環境要因が多く、男女で関連要因が異なっていた。すなわち、男性では「景観」「自家用車の有無」などが重要であったのに対して、女性では「商店へのアクセス」「社会的環境」が関連していた。以上より、一般成人の先行研究と比較して、高齢者は、(1)関連する環境要因について、TWとRWの区別が明瞭でなくなる、(2)一般成人においてRWとより強く関連することが指摘されている環境要因(例:景観、社会的環境)がより重要な意味を持つ、という結果だった。 次に、自記式質問紙で評価した体力の高低で対象者を層別化して解析を行った。その結果、高体力者に比較して低体力者では、環境と歩行との関連が不明瞭だった(仮説とは逆の結果)。低体力者では、良好な環境を維持するだけでは身体活動の維持が難しいのかもしれない。 研究は計画通りに遂行された。高齢者を対象とした身体活動環境要因の関連は世界的にも少ない。また、日本ではほとんど実施されていない。本研究では高齢者に特徴的な知見が得られており、今後の高齢者の健康対策を進める上での重要な結果が得られた。
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