受動喫煙による肺免疫系への影響と肺癌発生の関係は解明されておらず、肺の免疫系で重要な肺胞マクロファージについて研究することは大変意義がある。副流煙の暴露はタバコ20本分の副流煙を自動喫煙装置を用い一定量、均一にマウスの鼻部から曝露させた。曝露後、気管支肺胞洗浄により肺胞マクロファージ(AM)を回収した。AMの総細胞数は、副流煙により有意な増加が認められた。Dot Plots解析により、AMの大型化、細胞内部構造の複雑化が認められた。AMの細胞形態は大型化、細胞質内に空胞形成及び細胞表面の襞の収縮が認められた。AMのH_2O_2及びO_2産生は有意に増加した。AMのDNA損傷が認められ、副流煙水溶性抽出液処理でも濃度依存的に誘導された。AMの貪食活性は有意に低下した。AMのCD11b発現は有意な減少が認められたが、CD16発現に対しては有意な差が認められなかったことから、貪食活性の低下はCD11b発現低下によることが証明された。AMのTLR-2、TLR-4、CD14発現は有意な減少が認められた。AMのTNF-αmRNAの発現は有意な減少が認められたが、IL-1β及びTGF-βmRNAの発現には差は認めれなかった。以上の成績より、AMが副流煙曝露により肺内に吸入された煙粒子を貪食し、またその成分の刺激により過剰な活性酸素種を産生し、AMのDNAの損傷が誘導されることを証明した。その結果、AMのオプソニンレセプターと細菌認識レセプターの減少させ貪食機能の低下を誘導し、TNF-αのmRNAの発現低下も引き起こされることを証明した。これらの成績から、副流煙曝露により誘導されたAMの形態的変化及び免疫機能の低下は、細菌感染リスクの増大と肺癌の発症に密接に関係していることを証明した。
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