本年度に実施した研究概要は以下の通りである。 (1)研究対象:対象校は東海地区山間部の複式学級を設置している小規模公立小学校3校であった。児童、保護者からの本研究への同意・協力が得られた4~6年生59名を対象とした。対象者のうち、通学距離が現行基準(4km以内)を超える児童は17%(10名)であった。 (2)研究方法:通学条件(距離、時間、方法、通学環境)、自覚的心身症状、学校生活・自宅での生活(塾・習い事、学習状況)、運動習慣および体力の自己評価、体力・運動能力テスト結果の各項目について質問紙調査を実施した。ストレスの客観的評価指標として唾液中のコルチゾールおよびクロモグラニンAを2回(登校直後と4時間目終了直後)測定した。身体活動量については、腰部装着型加速度モニターを用いて、休日を含む1週間の歩数、消費量、運動強度を連続記録した。 (3)研究結果:昨年度までの研究成果をふまえ、通学距離を考慮した各指標間の関連性について検討した。通学時間や通学中の徒歩時間の長さは通学環境ストレス、活動意欲、身体症状や気分と有意な関連がみられ、所要時間が長くなるほど通学環境ストレスの増加や活動意欲の低下が示された。一方、腹痛などの身体症状やネガティブな気分の訴えは減少する傾向がみられた。 通学時間や通学中の徒歩時間と登校日の運動量、歩数、低~中程度の運動強度の活動には有意な関連がみられ、所要時間が長くなるほど日中の身体活動量は増加した。一方休日では、通学中の徒歩時間が長いほど日中の身体活動度(運動量、低~中程度の運動強度など)は低減する様子がみられた。 以上の結果より、日常的な気分・心身症状や生活行動を含めた身体活動の増減は通学形態と関連があることが示唆された。
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