研究課題
腹部肥満は本邦におけるメタボリックシンドローム(MetS)診断基準の基盤病態である。本研究ではさまざまなMetSリスク因子に加えて、炎症マーカーやサイトカインなどを測定し、腹部肥満との関係を明らかにすることにより動脈硬化症の進展予測因子について検討した。腹部肥満群においてはMetSリスク因子の集積に伴い、血中CRP、IL-6レベルは有意に上昇したが、非肥満群ではMetSリスク因子が集積してもこれらの炎症マーカーの上昇は認めなかった。頸動脈中内膜肥厚度(IMT)は、男女ともMetSリスク因子の集積に伴い増大が認められたが、女性においてより強く影響を受けることが明らかとなった。また、男性においては動脈硬化進展へのIL-6の関与が示唆された。約1年間の観察期間中にIMTは有意に増大したが、その増加率は腹部肥満群で有意に大きかった。観察期間中の各種リスク因子の変化の中で、IMTの増加と有意な相関を認めたのはBMIと腹囲の変化のみであり、他のMetS関連リスク因子の変化とは相関を認めなかった。女性においてはIMTの変化量とMetS関連リスク因子やIL-6、hs-CRPには相関を認めなかった。しかしながら、BMIが増加した女性においてはBMIが変化しなかった女性に比べて、有意にIMTは増大していた。さらに、肥満女性においてはIMTの変化量とコレステロールの変化に相関が認められた。以上の結果より、動脈硬化症の進展にはMetS関連因子のなかでも特に腹部肥満の強い関与が示唆され、脂肪細胞由来のアディポサイトカインがMetSの病態に大きな役割を演じていると考えられた。腹囲に代表される危険因子一つの存在であっても、注意を喚起することが健康の維持および増進に極めて重要であることが明らかとなった。
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