研究課題
メタボリックシンドローム(MetS)は、動脈硬化を基盤とする脳および心血管障害の危険因子として、予防医学の観点から注目されている。本邦におけるMetS診断基準の基盤病態として腹部肥満があげられており、これまでの研究により腹部肥満群ではMetSリスク因子の集積に伴い血中CRP、IL-6レベルは有意に上昇するが、非肥満群ではMetSリスク因子が集積してもこれらの炎症マーカーの上昇は認めないことを報告してきた。昨年度までの本研究において、約1年間の観察期間中に頸動脈中内膜肥厚度(IMT)は有意に増大し、その増加率は腹部肥満群で有意に大きかった。観察期間中の各種リスク因子の変化量の中で、IMTの増加と有意な相関を認めたのはBMIと腹囲の変化のみであり、他のMetS関連リスク因子の変化とは相関を認めないことが明らかとなった。今回、より長期にわたりIMT増大に影響を及ぼす因子を検討したところ、血圧、尿酸値、コレステロール(Total & LDL)、HbAlcが関与することが明らかとなった。喫煙や飲酒、睡眠などの生活習慣の関与についてもさらに検討を加えた。喫煙者では非喫煙者と比較して有意に血中hs-CRP、IL-6レベルは高く、IMTも有意に大きい値を示した。喫煙者では観察期間中のIMTの増加量も非喫煙者と比較して有意に大きかった。また、飲酒機会および間食機会の増加は2年間の観察期間中のMetSリスク因子の増加と相関していた。睡眠に関しては、肥満群において睡眠時間が長いほどMetSリスク因子の低下を認めた。以上の結果より、生活習慣の改善もMetS予防にきわめて重要な因子であることが明らかとなった。
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