体水分の代謝回転(WT)を水分代謝の指標とし、身体活動レベルの異なる若年者から高齢者までの幅広い年齢グループを対象に水分代謝に影響する要因を検討することが本研究の目的である。今年度の計画は、1)フーリエ変換赤外分光光度計を用いた、新たに導入した測定システムの精度管理を行ない、2)身体活動レベルの異なる対象者についてのWTを測定し、身体活動量と水分代謝の関係を明らかにすることであった。 今年度は、新たに導入された機器(フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR))を用いて測定システムの精度管理を繰り返し実施し、多数例を測定するための測定システムを確立するのに尽力した。その結果、高い再現性が得られるシステムを構築し、水同位体希釈法による体水分およびWTの算出が出来ることが確認できた。実際に、pilot studyとして、高齢者8名、若年者8名を対象にWTを測定し、同時に加速度計を用いて、歩数、エネルギー消費量を測定し、被験者の身体活動レベルとWTの関係を算出した。その結果、同年齢であれば、身体活動レベルの高い被験者ほど、およそ20-30%水分代謝が亢進しているデータを得た。さらに、両グループにおけるWTに占める水分摂取量の割合の算出を試みた。本年度の成果は、先行研究の見当たらない高齢者の水分代謝についてのデータであり、脱水を回避し安全で且つ効果的な高齢者にとって望ましい水分摂取のあり方を構築する緒となったといえる。
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