体水分の代謝回転(WT)を水分代謝の指標とし、身体活動レベルの異なる若年者から高齢者までの幅広い年齢グループを対象に水分代謝に影響する要因を検討することが本研究の目的である。今年度の計画は、昨年度に引き続き、身体活動レベルの異なる対象者についてのWTを測定し、とくに高齢者の身体活動量と水分代謝の関係を検討するのに加え、腎機能の加齢変化と水分代謝の関係を明らかにすることであった。 今年度は、身体活動レベルの異なる高齢者を対象にWTを測定し、同時に加速度計を用いて、歩数、運動によるエネルギー消費量、一日当たりの総エネルギー消費量を測定し、被験者の身体活動レベルとWTの関係を算出した。さらに、腎機能を日本人用MDRD式を用いて評価し、腎機能とWTの関係を算出した。その結果、高齢者のWTは腎機能に関わらず、身体活動レベルによって決定されていた。つまり、高齢者の水分代謝は日常の身体活動レベルによって著しい影響を受けており、脱水などの水分代謝異常を回避するためには、身体活動レベル毎の水分摂取のあり方を構築する必要性を示唆している。 しかし、著しく身体活動量が低下しているグループ(整形外科的疾患によって入院している患者)のWTについては、運動習慣のない通常の生活をしているグループとの差が認められなかった。この結果は、ベッドレストによって身体活動量を著しく制限した先行研究の結果と同様であるが、その理由の詳細については今後の検討課題である。
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