研究課題
細胞内への過剰な脂肪蓄積はインスリン抵抗性を惹起し、2型糖尿病、動脈硬化、脂肪肝など種々の病態を引き起こす。我々は細胞内脂肪滴形成に関わる蛋白を「貯蔵遺伝子」と呼称し、その遺伝子発現を制御することにより、これらの病態の発症・進展を予防する手段を探索している。フランス海岸松樹皮抽出物であるピクノジェノールは、抗酸化作用を有するサプリメントとして広く一般に利用されている。Toll-like receptor4(TLR4)はマクロファージを活性化させ、動脈硬化の発症・進展に深くかかわる。また、マクロファージにおける貯蔵遺伝子の一つであるAdipose differentiation-related protein(ADRP)は動脈硬化病巣に高い発現を示す。本研究で、我々はTLR4刺激がADRP発現を促進し、マクロファージの泡沫化を促進することを見出した。ピクノジェノールはこのTLR4刺激によるADRP発現を抑制し、泡沫化を抑制することを明らかにした。さらに、このADRP発現抑制の分子機構として、AP-1やNFkBというレドックス感受性転写因子の活性化を抑制することを明らかにし、これらの転写因子機能の抑制はDNA結合以降の過程で生じる可能性を示した。一方、抗酸化食品成分のすべてにこのようなADRP発現の抑制作用があるとは限らないことも判明した。さらに、我々は糖尿病や関節リウマチなどの患者で末梢血白血球のADRP発現が亢進していることを見出したので、末梢血白血球におけるADRP発現を抗酸化食品成分の作用を分類する効果検証系として利用できるものと考えられる。また、らい腫型のらい菌感染症では、感染したマクロファージの泡沫化が菌の生存に必要であるが、この泡沫化に貯蔵遺伝子ADRPとperilipinの発現亢進が関わることを明らかにした。
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